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書籍紹介 食べ物じゃないよ、『モモ』だよ。

こんにちは、岡崎です。

暇さえあれば読書をしています。

最近読んだおすすめ本をご紹介します。

 

ミヒャエル・エンデの『モモ』。

1974年にドイツ児童文学賞を受賞したこの作品は、小学生から大人まで幅広い世代が楽しめます。

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本書は、時間どろぼうである「灰色の男たち」とモモの対決というスリルあふれる展開を通して、1分1秒と時間に追われる現代社会へ、警鐘を鳴らしている。たとえば、モモの友だちだったニノが「スピード料理」の店を始め、大繁盛しているせいで他人とわずかな世間話をする暇もないというように、時間を盗まれた人たちは、現代の私たちの姿そのものとして描かれている。昨今、モモのように際限のない時間の中で、空想をめぐらせ楽しむ生活はほとんど忘れられている。子どもばかりでなく、忙しい大人たちにも夢見ることの大切さを教えてくれる本だ。(砂塚洋美)

 

物語の中で、モモが「時間の国」を訪れる場面があります。重要かつ私が最も好きなシーンです。

ここでモモは、人間に時間を配っている存在に出会います。マイスター・ホラと名乗るその彼は、こんなことを言いました。

「(前略) 光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。」

私はここで、「忙しい忙しい」と口癖のように言っている人を思い浮かべました。というのも、「忙」という字は「心」を「亡くす」と書きますね。きっと、これは偶然ではなく、時間というものが心のあり方によって短くも長くもなるということなのでしょう。

そして、マイスター・ホラは、モモに「時間の源」が見える場所に案内します。


「それはモモがいちども見たことのないほど、うつくしい花でした。まるで、光りかがやく色そのものでできているようです。このような色があろうとは、モモは想像さえしたことがありません。(中略) これほどうつくしい花があろうかと、モモには思えました。これこそすべての花の中の花、唯一無比の奇跡の花です!けれどこの花もまたさかりをすぎ、くらい水底に散って沈んでゆくのを見て、モモは声をあげて泣きたい思いでした。」
「見ているうちにモモにだんだんとわかってきましたが、新しく咲く花はどれも、それまでのどれとも違った花でしたし、ひとつ咲くごとに、これこそいちばんうつくしいと思えるような花でした。」


この花こそ、私たちひとりひとりの人間に与えられた時間。とっても美しくて、儚くて。このシーンはまだまだ長い文章で描かれています。ここまで時間について幻想的な描写をしてある本を読んだことはありません。

『ゾウの時間、ネズミの時間』(著者 本川 達雄)によると、動作のスピードが遅い動物も早い動物も、行動できる回数はほぼ一緒。つまり、神様は生き物に平等に時間を与えて下さったということでしょう。これってスゴイと思いませんか!

 

常々思うのは、何年生きたかというよりも何をしたか…が大事だろうってこと。

スティーブ・ジョブズは56で亡くなりましたが、誰もが知っているAppleを創業し、世界中の人々がiphoneを愛用しています。さらに世界で最も成功したアニメーションスタジオであるピクサーを創業し、トイ・ストーリーをはじめ、数多くの作品は多くの人を楽しませてくれます。短命でしたが、とってもとっても社会に貢献しました。

…しかし、ここで重要だと思うのは、「だからと言って、いつも目標や理想に向かって走ってなきゃ価値のある人間になれないってことはない。何もしない時間が無意味だということにはならない」ということ。(それに、スティーブ・ジョブズイチローのようなスーパースターと、私たちのような一般人も、神さまからすれば同様の存在価値を持っていると思います。なぜなら、彼らが評価されるのは、比較される対象や、彼らの仕事を支える存在があって初めて成り立つからです。)

何もしない時間が無意味だと考えるようになってしまった人間が、モモの物語の中で灰色の男に時間を奪われてしまう人たちなんです。成功という言葉に心を奪われ、同時に時間を奪われる。結果、彼らはどれだけいい物を手にしても、それを味わう時間も心の余裕も持っていません。豊かさって、なんなのでしょうか?

つい熱が入ってしまいました。このあたりで終わります。

時間に追われているように感じられ、なんか疲れてきた…というあなた。

大好きな場所で、大好きな飲み物と一緒に、モモを読んでみませんか?

この物語は、きっと失われた時間を取り戻してくれるはずです。

 

岡崎